GM倒産=アメリカ倒産


 GMの破産劇は、近い将来の米国国家の破産の「良い前例」となる。

社債を乱発し、借金まみれとなり、破産するGMは、国債・ドルの乱発で借金まみれとなり破産するアメリカ国家の「良い前例」となる。

GMの債権者達は「破産」を冷静に受け止め、借金の「棒引き」に賛成した。

会社が消滅するよりは、貸した金を「返さなくて良い」と、仕方なく認めた。

GMの労働組合は、高い給与と死ぬまでの年金・医療保険をGMから享受し続けてきた「寄生虫」であり、日米国家の「国家官僚」に該当する。

この年金・医療保険を享受するという約束=債権は、50%カットされた。

つまり国家が破産しても、官僚は自分達の利権の半分は残すと言うことである。

一方、退職金等をGM社債に投資した高齢者達のような一般投資家は、当初、90%の借金「棒引き」を要求された。

つまり国家が破産しても、官僚は50%の利権を確保し、一般市民は90%の権利=年金・医療・福祉をカットされる、と言う事が示された。

一方、破産が近くなると、ヘッジファンド等の「ハゲタカ」が、額面1万ドルのGM社債を1000ドルで買い叩き、買占めを開始した。GMとアメリカ政府が、もしも額面1万ドルに対し5000ドルを保証し支払えば、「ハゲタカ」は1000ドルが5000ドルに「化ける」という大儲けをする事になる。まさに「ハゲタカ」である。

アメリカ政府と、GMは、この「ハゲタカ」に食い物にされまいとして、一般投資家を冷遇したが、ハゲタカと、いっしょにされ、冷遇された、退職金をGM社債に投資した高齢者達には、今後、間違いなく自殺者が出る。国営の年金制度の無いアメリカでは、こうした大企業の安定した社債に投資し、その利息で生活する高齢者が多数居る。GMの破産は、こうした多くの高齢者の明日からの生活費を奪い、ホームレスに追い込む結果となる。

同じ社債所有者であっても、高齢者のような小口の投資家=30万ドル以下等々は全額保証し、数百万ドルの投資家=ハゲタカには5%の保証にする等の工夫が必要であるが、法律的には大口だけを冷遇する根拠の提示が難しく、裁判所に持ち込まれると無効になる可能性が高い。また30万ドルと上限を作ると、ハゲタカは、30万ドル未満の小口の「ハゲタカ・ファンド」を平然と乱立させるであろう。

 いずれにしても、労働組合=国家官僚には50%保証し、他の債権者には10%しか保証しないという、この方針は世界中から非難を浴びた。

アメリカ政府は、最終的には労働組合の株式所有率を17.5%とし、一般債権者を25%とした。

一見すると、労組を冷遇しているように見えるが、労組は配当金=利息に近いものを毎年、入手できる優先株式を手に入れ、株式以外にも社債を別口で入手した。値上がりしなければ利益にならない株式より、配当金・利息の出る社債優先株の方が、はるかに有利である。一般投資家には、この優先株も、社債も渡されない。

数字上は、労組冷遇に「見せかけながら」、国家官僚の利益を優先し、一般市民を冷遇するという「ゴマカシ」をアメリカ政府は行っている。

また株式は、株式現物だけではなく、新株引受権と言う形で一部、手渡される。

 こうしたGM処理の経過から、アメリカ国家が破産し、米国債・ドルが紙クズになった場合、米国債や外貨準備としてドルを多額に持つ、日本・中国と言う国は、そのドル資産の90%程度を「棒引き」にされ、「泣く」と言う結果が見えてくる。GM社債の所有者達が、100%会社が消滅するよりも、「棒引き」を選択したように、アメリカ政府の完全消滅によって世界が大混乱と、大恐慌・戦争に陥るよりも、世界各国・日本・中国は「棒引き」で我慢させられる結果になる。

ここで、10%に抵抗し、政治力を発揮し抵抗した場合、20%前後の債権が残され、80%の棒引きになる。日本が大部分の国富を失う点では変化はない。

また、残された10〜20%の権利は、債権のように利息が支払われ、それで何かが買えるといった性質のものではなく、株式=会社経営に参加し、意見を述べる権利に置換される。アメリカ破産後に出現する「世界政府?」なるものに、参加し強い発言権を持つだけで我慢しなくてはならず、最も優遇されたGM労組が入手した優先株社債のように利息で品物が買える権利は、わずかに10%に満たない。

つまり、ドル資産は、ほぼ全てが紙クズになる。

 こうして再生させれらるGMからは不良資産が切り捨てられ優良資産だけが残される。新生GMの株主達は、自分達の持つ株が優良資産で裏付けられている事を「唯一の慰め」としなければならない。アメリカ破綻後に、新しい「世界通貨」を入手したものは、それが原油天然ガス・金塊等、優良資産で裏付けられている事に、旧ドル資産の大部分を失った事への「唯一の慰め」を見出すしかない。

GMの発行する新株引受権は、アメリカ破産後に各国が、その旧ドル資産に応じて受け取る、「新通貨引受権」に該当する。景気悪化等で公共事業を行う場合、各国が、その権利を行使し、「世界政府?」から新たな通貨を印刷してもらい受け取り、それで公共事業等々を行う権利である。

現物株式を発行する場合、その量が多すぎると供給過剰で株が暴落する。それを避けるために、新株引受権を発行し、時間をかけ、徐々に株を発行して行く事で暴落を回避する事が、この権利の目的の一つであり、権利行使には株の時価が幾ら以上の場合等々、厳しい条件が課せられる。同様に、アメリカ破綻後の新通貨引受権には、GDP成長率マイナス何%以下等々の条件が課される事になる。自由に使える通貨ではない事になる。

アメリカ破綻後には、ドル資産は大部分紙クズとなり、わずかな新通貨と、「わずかな新通貨への不満を誤魔化すために支給される」厳しい発行条件のある新通貨引受権で満足しなくてはならない。GMへの投資で全財産を失った高齢者や投資家達は、「これで仕方ない」として破産手続き=会社再生手続きに入る。

アメリカ破綻後も、世界中の国・市民は、ほぼ全財産を失いながら、「これで仕方ない」として再建手続きに入る事になる。

ただしGMへの投資家は、全員、市場原理を知り、破産・倒産が、どういうものかを理解し、自己責任論についても理解している。GMの経営状況について、自分達の情報収集が十分でなかった事、早期にGM株・社債を売り、別の安全な投資先を探しておかなかった事について、自責の念も持っている。

しかし世界は広く、アメリカ破綻とドル資産の紙クズ化に際して、GMへの投資家達のように市場原理を十分理解し、自責せず、逆に、腹いせに、アメリカに核ミサイルを打ち込む狂気が生じないという保証は、どこにもない。某国のように、競輪が台風で中止になっただけで競輪場を破壊し放火し、あるいは応援するサッカーチームが負けた、腹いせに、放火・ピストル乱射をする国も、世界には、確かに存在しているのである。